ＳＥＯとは，Ｓｅａｒｃｈ Ｅｎｇｉｎｅ Ｏｐｔｉｍｉｚａｔｉｏｎの略で，検索エンジン最適化などと邦訳され，検索結果の上位に表示されるよう，検索エンジン向けにＷｅｂサイトを最適化することをいう。ＳＥＯを解説することが目的ではないため，詳細説明は書籍や他のサイトに譲るが，なぜ重要かという理由として次のようなことがあげられている。

• インターネットユーザの大半は検索エンジンを利用している。（８割とも９割とも。）
  
  
• 自身が入力したキーワードのため，興味・関心の高い見込み客を効率的に集客できる。
  
  
• 興味・関心が高い見込み客のため，コンバージョン率（成約の割合）が高い。
  
  

　みなもっともな理由である。この点に関しては疑う余地はない。あらためて言うまでもないがＳＥＯは重要である。では，「今すぐにでも実施しなくては！」ということになるのであろうか・・・・。

　結論を先に述べてしまえば，「ＳＥＯは，重要ではあるが，必要ではない。」ということである。

　少々思い切った言い方をしているので，誤解のないようにもう少し詳しく説明したい。「ＳＥＯは不要か」といえば，そうではない。ＳＥＯは重要なのだから当然である。必要とは，文字通り「必ず要る」ということである。つまり，ポイントは"必ず"なのかということである。

　例えば，ＥＣサイトからほとんど収益が上がっていない企業が，サイトのリニューアルを行う場合を考えてみる。

　通常は期間と予算が決まっている。その限られた期間と予算のほとんどをＳＥＯに費やすとしよう。結果，計画通りのキーワードで，計画通りの順位（上位５位以内など）に表示されるようになった・・・・。果たして，これでサイトリニューアルの目的は達成されたのであろうか。

　「集客」という目的は達成されるであろう。しかし，サイトリニューアルの目的は達成されていない。なぜなら，せっかく集客できても，Ｗｅｂユーザビリティに対して配慮を欠くサイトであれば，見込み客はストレスを感じて次の候補のサイトへ移動してしまう。

　また，Ｗｅｂユーザビリティに対しての配慮が十分であったとしても，そもそも，集めた見込み客にとって魅力的な商品・サービスがなければ，やはり次の候補のサイトへ移動してしまう。

　ＳＥＯだけを実施しても，本来の目的（収益を上げること）は達成できないのである。

　集客は無視して良いのかといえば，当然そうではい。それでも，やはりＳＥＯは必要ないのである。それはなぜか・・・・。

　Ｗｅｂユーザビリティを考慮することで，ある程度ＳＥＯもカバーするからである。もちろん，期間や予算が許すのであれば，Ｗｅｂユーザビリティを考慮した上で，ＳＥＯを行えば良い。しかし，限られた期間と予算を効率よく利用することを考えた場合，その方法の一つとして，ＳＥＯを無視し，Ｗｅｂユーザビリティに力を入れるというやり方がある。

　ＷｅｂユーザビリティとＳＥＯでは，実現するための技術的な部分では共通点が多い。不思議に思うかもしれないが，実は当然のことである。なぜなら，検索エンジンのアルゴリズムは，検索エンジンスパム対策等を施して高度化し，利用者が求める情報が掲載されている有益なサイトを検索結果として提示しようとしているからである。

　つまり，検索エンジンが求めるものと，Ｗｅｂユーザビリティが目指すものは同じなのである。利用者に対して有益な情報を分かりやすく提供するために行ったことそのものが，結果として検索エンジンに高く評価される傾向にある。しかも，検索エンジンアルゴリズムが進化すれば，さらにその傾向が高まるのである。

　ＳＥＯが必要ではないといっても，とにかくＷｅｂユーザビリティを追求すれば良いということではない。Ｗｅｂユーザビリティをどんなに突き詰めても，全ての人にとって最高に使いやすいサイトにはならない。なぜなら，使う人の属性によって一番使いやすい方法は異なるからである。ＳＥＯも同様で，どんなに極めても，何千，何万という全ての言葉で検索結果上位に表示されるということはあり得ない。

　本当に必要なことは，何のためにそれを行うかという戦略を明確にすることである。その上で，それを実現するための手段として，ＳＥＯなり，Ｗｅｂユーザビリティなりを利用すれば良いのである。


　　（おわり）